不認定事例について考えてみる

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こんにちは、税理士山下です。

ここ最近、数冊の実務書を並行して読んでいます。

公益法人関係も2冊読んでおり、そのうちの1冊がこれです。

 

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最近は移行後に関する書籍も発刊されるようになり、助かります。

で、この本の中には「公益認定の不認定」について触れている個所があり、

具体的に列挙しています。

でも、さすがに不認定事案なので法人名は伏字です。

 

6社ほど、不認定事案を挙げているのですが、

そのうちの2つめが・・・。

 

 

 

 

(2)社団法人〇〇会議所(岐阜県不認定)

 

・・・って、伏字の意味無くない?

〇〇会議所といえば、2パターンしか思い浮かばない。

そして、社団法人なのは1つだけ。

県も限定されている・・・。

「ええのん?これって、ええのん?」と関西弁で独り言・・・。

 

公益法人インフォーメーションで直ぐに特定できました。

内閣府や東京都以外は、もともとの件数が少ないので、

これだけ材料が揃っていれば、すぐに分かります。

 

この本にも不認定理由は書いてあるのですが、答申でも確認。

以下、答申を一部抜粋。(若干の省略あり)

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

申請法人については、そもそも、前年度末の貸借対照表が

財産目録及び正味財産増減計算書と整合しておらず(*1)、

このような貸借対照表を基礎とした別表C(1)の数値には

疑義が持たれるところである。

特に、別表C(1)の「正味財産計」の欄の数値は、前年度末の

貸借対照表の「正味財産合計」欄の数値と別表Gの「当期一般

正味財産増減額」の欄の数値との和と一致するものと考えられるが、

これらの数値は、申請書において、明らかに一致していない(*2)

このような状況に照らせば、申請法人については、「遊休財産額の

保有制限」に適合するか否かの判定の基礎となる数値が不明確であると

言わざるを得ない。

*1、*2 これらの点については、当審議会への諮問に先立ち、

行政庁から申請法人に指摘し、説明等を求めたが、十分な説明等が

なかったところである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「うん、これはありえへんわ。」が、感想です。

まず前期のB/Sが、財産目録及びP/Lと一致していない。

そして見込B/Sを基に作くられるであろう別表C(1)が、

前期のB/S及び予算書と整合性が取れていない。

うん、まず有り得ないことです。

 

そして、その点についても行政から指摘もしている。

なのに、不認定。

どゆこと?

 

通常は行政からの「補正要求」により、修正を行います。

また、どうしても補正が不可能であれば「取り下げ」するのが普通の判断です。

でも、そのどちらもしなかったのですね?

どゆこと?

正直、理解不能です。

 

 

 

 4つ目の事例で、さらに衝撃が・・・。

 

 

 

 

 

(4)社団法人〇〇土地家屋調査士会(沖縄県不認定)

 

 

 

 

・・・ってマジで、伏字にする意味ないんちゃうの?

 「ええのん?これってホントにええのん?」と呟きながら検索。

直ぐに答申が見つかりました。

 

でも正確には、末尾が「調査士会」ではなく、「調査士協会」でした。

最初は誤植・校正ミスだと思ったのですが、

もしかしたら、「伏字が伏字の役割を果たしていない」、

「前貼りを貼ったつもりが、サランラップを撒いてただけだった」と判断した、

「久保・小林」両会計士or発行元の「ぎょうせい」のせめてもの優しさかも・・・?

などとも思いました。

 

で、答申による不認定理由は、

以下の部分に凝縮されています。

以下、抜粋。(一部、省略)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

事業番号「公1」の事業の主要な内容は、官公署等の依頼を受けて

法第64条第1項に規定する事務を行うこと(調査士法事業)であるが、

これは、受託事業を執行するという性質を有するに過ぎず、認定法の定める

要件を満たす公益目的次号とは言えないのではないか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「うん、これはありえるわ。」というのが、率直な感想です。

 

まず国等からの受託事業はFAQで「直ちに公益目的事業になるものではない」

といった内容の記載があります。

これをもって、「国や県からの受託事業は、公益事業じゃないんです!」

って言う人、多すぎです。

そんなことは、書いてないんです。

でも、ちゃんと理解していない人がホントたくさんいます。

それが行政側の人だと、正直ウンザリします。

ただ、この不認定の法人がどうかは私は全く知りませんが。

気になる点は、受託事業以外で公益を謳える事業をしてるかどうかですね。

単独だと、理論構成が難しいでしょうね。

 

しかしながら「公共嘱託登記土地家屋調査士協会」は、他県で認定実績があります。

認定された法人と、どのように違うかがポイントになります。

私が「あり」と考えるのは、そのためです。

不認定でも答申が必要です。なぜ不認定なのか。

それを争うことが出来ます。

 

異議申立て等の手続きをしても良いだろうし、

あるいは内閣府に提出し直すことも可能です。

行政側としては、自分が不認定にしたものが、全く同じ内容で

内閣府が認定しようものなら、とんだ赤っ恥です。

だから、あえて自ら取り下げをしないという選択肢が有り得ます。

つまりは駆け引きですね。

不認定を出す側にも、覚悟が必要ですから。

 

今のところ、私が担当するお客様には全く関係しないので、

これ以上の詳細を調べるつもりはありません。

でも、なかなか面白い案件です。

動向があれば、また調べてみたいと思います。

 

                                         おしまい。 

 

 追記:7件目の不認定が、東京都で出てますね。

 

 

 

 

このブログ記事について

このページは、STAFFが2012年7月 2日 15:00に書いたブログ記事です。

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