ペイオフと世代間格差

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こんにちは、二見事務所の山下です。
朝夕は、すっかり秋らしくなりましたね。

日本振興銀行の経営破綻・ペイオフ発動から1週間が過ぎました。
にもかかわらず、この件に関する報道は思いのほか小さいものです。
有言実行内閣やマーシー事件、お塩裁判等の影に、すっかり隠れています。
テレビに限って言えば、外国で地下に閉じ込められている人たちの、
「本妻VS愛人」報道の方が多いような気すらします。

当初、預金者への取材記事で、以下のようなものがありました。
(ネットニュースより抜粋です)


 夫が約2千万円預金しているという東京都台東区の70代女性は本店を訪れ「だまされた。やられたと思った。預金は今日が満期日だったので昨日解約すればよかった。汗水流してためたお金なのに」と半ばあきらめ顔。


 
 「定年まで働いてためた老後の大事なお金だった。友達に金利がいいと勧められて預金を全部移した」と説明。「ペイオフは知っていた。100パーセントわたしの責任」と再び泣き崩れたが、銀行への恨み言は口にしなかった。


 
 1300万円を預けていたという横浜市の元会社社長の男性(72)は「(木村剛前会長は)格好いいことばかり言っていたが失望した。年金1年分の300万円がどうなるのか」と憤りを隠せない様子。



皆さん、これを読んでどのように思ったでしょうか?
私は単純に、「税金を投入してもいいから、助けてあげたい」
と最初は思いました。

でも税金を投入して救済するということは、
税金を払っている人が全員で、上記の人たちを救済すると言うことです。
皆が皆、同じように思うでしょうか?

そう考えた場合、まず『救済される側』の人たちが、
どのような人たちなのかを、しっかりと認識する必要があります。
上記の記事だけで言うと、次のようになります。

1.汗水流してお金を貯めることができた人たち
2.定年まで働いて老後を迎えることができた人たち
3.年金を1年間で300万円もらうことができる人たち



つまり、古き良き時代の日本で高度経済成長の恩恵を受け、
終身雇用制度年功序列制度の恩恵をうけ、
退職後の老後は公的年金制度の恩恵を受け続けている人たちです。



一方で、現代の若者はどうでしょうか。
ロスジェネ世代、団塊ジュニアと呼ばれる世代には、
大学を卒業しても正社員になれず「フリーター」や「派遣社員」として、
働かざるを得ない若者が多く存在します。

もちろん自分の意志で、そのような雇用形態を選択した人もいるでしょうが、
自分の意志に反して、そうなってしまった人も多いでしょう。
新卒⇒正社員のレールから一度外れてしまうと、その後は正社員になることが難しく、
フリーターや派遣社員にならざるを得ない環境にあります。

彼等を、上記の日本振興銀行預金者と較べると、次のように言えます。

1.汗水流して働く場所が見つからない
2.働く場所が見つかっても、正社員になれない
  だから、いつ首を切られるか分からない
3.正社員ではないから昇給や賞与がなく、お金を貯めることができない
4.給料が少ないから、公的年金を貰えるにしても小額になる
  あるいは、給料が少ないから国民年金が払えずに無年金になる



彼等からすれば、税金を使って預金者救済なんて、とんでもないことでしょう。
ペイオフなんて、それこそ自己責任。
金持ちが欲張って、ハイリスクハイリターン商品手に手を出したに過ぎない。
そう考えるのが当然かもしれません。


つまり、私が当初『救済してあげたい』と思ったのは、
預金者=年金受給者=老人=弱者、という発想からと思われますが、
実際は、老人よりも若者の方が、一般的には経済的弱者だったりします。
少なくとも、一つの銀行だけで数千万の預金ができる老人は、
若者からみれば圧倒的な経済的強者でしょう。


今回のペイオフ発動に関して、上記の問題から発動は当然と言う人はいないでしょう。
でも、もし救済していたら、上記の問題が提起されたと思います。
この問題がある以上、ペイオフの救済は他の問題も巻き込んでしまい、
政府や行政は対応がとても難しくなるように思います。

で、今回の日本振興銀行。
救済しなくても、全国的には影響が少ない。
今後大きな破綻があった場合の『前例』にもなる。
救済して他の問題に飛び火する心配がなくなる。
穿った見方でしょうか?
私が捻くれているだけでしょうか?

とにかく前例が出来てしまったペイオフ発動。
経済が縮小するなか、この傾向は強まることでしょう。
ますます自己責任が問われる時代ですね。


このブログ記事について

このページは、STAFFが2010年9月18日 11:30に書いたブログ記事です。

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