経済・金融: 2010年9月アーカイブ

ペイオフと世代間格差

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こんにちは、二見事務所の山下です。
朝夕は、すっかり秋らしくなりましたね。

日本振興銀行の経営破綻・ペイオフ発動から1週間が過ぎました。
にもかかわらず、この件に関する報道は思いのほか小さいものです。
有言実行内閣やマーシー事件、お塩裁判等の影に、すっかり隠れています。
テレビに限って言えば、外国で地下に閉じ込められている人たちの、
「本妻VS愛人」報道の方が多いような気すらします。

当初、預金者への取材記事で、以下のようなものがありました。
(ネットニュースより抜粋です)


 夫が約2千万円預金しているという東京都台東区の70代女性は本店を訪れ「だまされた。やられたと思った。預金は今日が満期日だったので昨日解約すればよかった。汗水流してためたお金なのに」と半ばあきらめ顔。


 
 「定年まで働いてためた老後の大事なお金だった。友達に金利がいいと勧められて預金を全部移した」と説明。「ペイオフは知っていた。100パーセントわたしの責任」と再び泣き崩れたが、銀行への恨み言は口にしなかった。


 
 1300万円を預けていたという横浜市の元会社社長の男性(72)は「(木村剛前会長は)格好いいことばかり言っていたが失望した。年金1年分の300万円がどうなるのか」と憤りを隠せない様子。



皆さん、これを読んでどのように思ったでしょうか?
私は単純に、「税金を投入してもいいから、助けてあげたい」
と最初は思いました。

でも税金を投入して救済するということは、
税金を払っている人が全員で、上記の人たちを救済すると言うことです。
皆が皆、同じように思うでしょうか?

そう考えた場合、まず『救済される側』の人たちが、
どのような人たちなのかを、しっかりと認識する必要があります。
上記の記事だけで言うと、次のようになります。

1.汗水流してお金を貯めることができた人たち
2.定年まで働いて老後を迎えることができた人たち
3.年金を1年間で300万円もらうことができる人たち



つまり、古き良き時代の日本で高度経済成長の恩恵を受け、
終身雇用制度年功序列制度の恩恵をうけ、
退職後の老後は公的年金制度の恩恵を受け続けている人たちです。



一方で、現代の若者はどうでしょうか。
ロスジェネ世代、団塊ジュニアと呼ばれる世代には、
大学を卒業しても正社員になれず「フリーター」や「派遣社員」として、
働かざるを得ない若者が多く存在します。

もちろん自分の意志で、そのような雇用形態を選択した人もいるでしょうが、
自分の意志に反して、そうなってしまった人も多いでしょう。
新卒⇒正社員のレールから一度外れてしまうと、その後は正社員になることが難しく、
フリーターや派遣社員にならざるを得ない環境にあります。

彼等を、上記の日本振興銀行預金者と較べると、次のように言えます。

1.汗水流して働く場所が見つからない
2.働く場所が見つかっても、正社員になれない
  だから、いつ首を切られるか分からない
3.正社員ではないから昇給や賞与がなく、お金を貯めることができない
4.給料が少ないから、公的年金を貰えるにしても小額になる
  あるいは、給料が少ないから国民年金が払えずに無年金になる



彼等からすれば、税金を使って預金者救済なんて、とんでもないことでしょう。
ペイオフなんて、それこそ自己責任。
金持ちが欲張って、ハイリスクハイリターン商品手に手を出したに過ぎない。
そう考えるのが当然かもしれません。


つまり、私が当初『救済してあげたい』と思ったのは、
預金者=年金受給者=老人=弱者、という発想からと思われますが、
実際は、老人よりも若者の方が、一般的には経済的弱者だったりします。
少なくとも、一つの銀行だけで数千万の預金ができる老人は、
若者からみれば圧倒的な経済的強者でしょう。


今回のペイオフ発動に関して、上記の問題から発動は当然と言う人はいないでしょう。
でも、もし救済していたら、上記の問題が提起されたと思います。
この問題がある以上、ペイオフの救済は他の問題も巻き込んでしまい、
政府や行政は対応がとても難しくなるように思います。

で、今回の日本振興銀行。
救済しなくても、全国的には影響が少ない。
今後大きな破綻があった場合の『前例』にもなる。
救済して他の問題に飛び火する心配がなくなる。
穿った見方でしょうか?
私が捻くれているだけでしょうか?

とにかく前例が出来てしまったペイオフ発動。
経済が縮小するなか、この傾向は強まることでしょう。
ますます自己責任が問われる時代ですね。


ペイオフ 初の発動

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こんにちは、二見事務所の山下です。
民主党総裁選、芸能人初の裁判員制度の経過等が毎日ニュースやワイドショーを盛り上げてますね。


そんな中、日経新聞の一面に衝撃的なニュース。
 ペイオフ 初の発動 

私は元銀行員なんですが、それも10年以上昔の話です。
だから今回破綻した日本振興銀行についても、報道以上のことは知りません。
ただ新聞広告で高金利預金をうたっているのを見る度に、

『 めっちゃ怪しい・・・ 』

とは思っていました。ある意味、案の定です。


これまでも銀行の破綻は色々ありました。
今回が初のペイオフ発動なのですが、これまで破綻した銀行の経緯や結果がどうだったのか改めて知りたくなり、『ウィキペディア』で調べてみました。


まずペイオフ制度について。
1996年に凍結されます。それまでのペイオフ制度は上限が100万円。
でも、「護送船団方式」と呼ばれる金融行政で銀行は手厚く保護されていました。
だけどバブルが崩壊、で凍結となりました。
2002年にペイオフ解禁。
2005年に本当の意味でのペイオフ解禁。
2002年と2005年の違いは、『決済専用預金』の扱い。
『決済専用預金』はペイオフ対象外なんですが、
2002年は『利息がつく普通預金とかもOK!』
2005年は『利息がつく普通預金とかは、ペイオフの対象!』

1995年、『兵庫銀行』が破綻。
銀行として戦後初の破綻でした。第二地方銀行です。
地元経済界等によって設立された『みどり銀行』が、受け皿になります。
でも債務も引き継いだため、またまた経営破綻。
阪神銀行が吸収合併し、現在は『みなと銀行』になっています。
三井住友銀行系列です。
兵庫銀行の破綻はペイオフ凍結中なので、預金は全額保護されました。
私もまだ現役の銀行員だったので、当時のことは覚えています。

1997年、『北海道拓殖銀行』が破綻。
私が銀行を退職して、ほんの数ヶ月後のことでした。
都銀が潰れる、という事実は本当に衝撃的でした。
救済されることなく、北洋銀行や中央信託銀行に営業譲渡。
1999年に解散、2006年に清算しました。
この破綻もペイオフ凍結中、預金は全額保護されました。

2003年足利銀行』が破綻。
地方銀行としては、戦後初の破綻です。(兵庫銀行は第二地銀)
しかし足利銀行は税金が投入され救済、一時国有化されます。
ですから、預金者には被害は当然ありません。
その後は株式売却され、現在では野村グループの『足利ホールディングス』100%子会社になっています。

国有化による救済としては、他にもいろいろあります。
日本長期信用銀行』は国有化を経て、現在は『新生銀行』。
日本債券信用銀行』も国有化を経て、現在は『あおぞら銀行』。
長期信用銀行でちゃんと生き残ったのは、日本興行銀行だけですね。
ちなみに長期信用銀行は『長期信用銀行法』に基く銀行で、『銀行法』に基く銀行ではないとのこと。

こうしてみると、これまでの銀行破綻は、
①ペイオフ凍結により保護される、
②他の銀行が救済して保護される、
③税金投入による国有化により保護される、
という結果に預金者はなっています。

だけど、今回は『ペイオフ発動』です。
(でも銀行自体は民事再生を申請予定とか・・・。)
これは何を意味するのか?
預金者の大半(97%)に影響がないから』との報道。
しかし当事者からすれば、
少ないからこそ、助けられるだろ?』という気持ちになるでしょうね。

でも、預金金利高かったでしょ?
少しくらいは、怪しいと思ったでしょ?
ペイオフ解禁、知ってるでしょ?


という事でしょうか・・・。
これからの時代、ますます自己責任が問われますね・・・。



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